できる限りシンプルに、ブドウが栽培された土地を表現する

ジュリアン・カスターニャ
ジュリアン・カスターニャ
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カスターニャ
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2018-12-17

ビクトリア州北東部のビーチワース(Beechworth)を囲う岩山は、そこで育つシラーズを特別なものにする。ビーチワース・シラーズ(Beechworth Shiraz)と銘打ったのはカスターニャが始まりであり、とてもスタイリッシュで、スモーキーで、香り豊かな<1999 Genesis Syrah>が広く世に知れ渡った。

ジュリアン・カスターニャはイタリアで生まれ、二歳で豪州に移住する。幼少期はメルボルンで育ち、その後は1970年代にヨーロッパへ移住する。スペインでしばらく暮らしたのち、彼はロンドンで映画産業や広告業界に携わる。そこで彼は、ワイン業界の人々と出会う。

「すっかりワインに心を奪われてしまった。あの頃の私たちはあまりに無知だった。ワインのことを何もしらないのに、さも知っているかのフリをして過ごしていたんだ。だからそこから私はワインについて学び、テイスティングに通うことになる。多くを試飲するにつれ、ワインに魅了され取り憑かれていった。それがすべての始まりだった。」とジュリアンは語る。

ジュリアンは最終的に豪州に戻り、広告映画制作会社エニグマをシドニーに設立する。1980年代半ばのことだ。そしてワインを買い、ワイナリーを訪れ、オーストラリアワインを探索する生活を続けた。しばらくすると、彼は広告業界に見切りを付け、自分と家族の将来について考え始めた。

「私が会議でプレゼンをしても、誰もろくに聞いていない。これほどまでに居心地が悪い事が他にあるだろうか。広告業界では創造性や経験よりも、調査と数字が重要視されていた。私は今が潮時だと感じた。そして映画製作を辞めた。これから何をやろう?自分の心に問いかけた。自分は二つのことを知っているそれは映画とワイン。そうだ、映画がだめならワインがいい!」

1996年にジュリアンと彼の妻は、思い切ってビーチワースのそばに土地を買った。そしてブドウを植え、醸造所と家を建てた。「これから面白いこと、素晴らしいことを起こす、そう意気込んでいた。どんなワインを造りたいのか、その時はまだ分かっていなかった。ただ自分が飲みたいワインで、誇りをもてるものを造りたいとだけ思っていた。」「私が造りたいワインは、土地に根ざしたものだった。そこで私は土の声に耳を傾けた。」

ビーチワース周辺の優れたブドウ畑同様、カスターニャは粘土層の上の古い真砂土に建てられた。この地域は日中の気温は暖かく、夜は涼しい。昼夜の極端な気温差が生き生きとした活力のあるワインを生み出す。また、カスターニャはバイオダイナミック農法を用いたブドウ畑として認定されている。この農法は、溌剌としたフレッシュさと自然本来の味わいをワインに与える。

この地域のワイン生産者がそうするように、ブドウ畑は手作業で剪定され、ブドウは手摘みされる。ワイン醸造への人的介入は最小限に留められる。同時に、添加する亜硫酸も最小限に抑える。

ワイン業界で真剣に取り組むべきものとしてジュリアンが選んだのは、バイオダイナミック農法を探求することだった。「ワインの味わいは醸造所が造るものではなくブドウ畑が育むものだ、と私は信じていたし今でも変わらない。」と彼は語る。「農業を完璧なものにする手立てとしてバイオダイナミック農法は理にかなっている。ブドウの品質を最適化しテロワールを最も良く表現する、最高の方法だと信じている。私たちが目指すのは、できる限りシンプルに、ブドウが栽培された土地を表現することだ。」

ジュリアンはこの方法論や基本原則に妄信的に従っているわけではない。ただ彼の目にはこれが常識と写っているだけだ。現在のバイオダイナミック農法やナチュラルワインの加熱したトレンドを考えると、なんとも清々しい態度だ。

カスターニャ

88 Ressom Ln, Beechworth VIC 3747