ピーター・ギブソン(Peter Gibson)はファインアートの講師を辞め、それまでの芸術活動を補完する狙いを持って、ワードオブマウスを設立した。彼の家系、父や祖父がブドウ栽培家兼園芸家でもあったことも動機の一つだった。ピーターの祖父であるミルン・ギブソンは南オーストラリアのマクラレンベールでブドウ園と果樹園を持っていて、彼のブランドであるモーレーパークは、炭火脱水機を使ったドライフルーツ造りのパイオニアであった。
ピーターの父ニニアンも家業のブドウ園を継ぎ、第二次世界大戦の前までブドウ園のマネージャーとして務めていた。ニニアンは戦後、再びブドウ園を経営しようと、南オーストラリアのクレアでブドウ園と果樹園を購入し、クレアベールのワイン造りにの先駆者となった。しかしながら、彼はチャンギの捕虜生活のころから健康面に問題を抱えており、土地を耕すことをあきらめざる終えなかった。その後はクレアベールワイン協会のワイン商として、シドニーにおける代理店をしていたが、彼の健康はその後も決して良くなることはなく、ピーターが3歳の時の亡くなった。
この2.5ヘクタールの小さなブドウ園は、海抜1013メートルという絶好の立地にあり、オレンジでピノ・グリを植えた最初の場所である。その後も2003年にヴィオニエ、2010年にはプティ・マンサンを植えた。2013年以降、ピノ・ノアールやシャルドネ、リースリングも植え、2015年にはアルバリーニョ、2017年の春にはメンシア(スペインの赤)とグリューナー・ヴェルトリーナー(オーストリアの白)を植えるなど、拡大の一途を辿っている。
何より私たちは、持続可能なブドウづくりやワインづくりを実現している。これまで私たちは、肥料や殺虫剤、除草剤を一切使うことなく、その代わりとなる手段を常に模索し続けていた。その結果として、私たちは自分たちが造るワインのラベルに”Vegan”や”Natural”と自信と誇りを持って記載することができる。私たちのワインづくりの工程は決して効率の良いものではないかもしれない。だが、私たちは胸張って言い切れる。この伝統的なワインづくりこそ一番なのだと。