良いワインを造るために必要なのは、しっかりとしたビジョンを持つこと

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コレクター・ワインズ
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2019-08-01

ワインメーカーのアレックス・マッケイ(Alex Mckay)は、キャンベラや周辺にあるワインの産地から最高品質のぶどうだけを厳選して集め、その土地らしさと、ぶどうが持つ風味を最大限に引き出したワインを造っています。

「ワインメーカーによって、おいしいワインを造るためにどこに重きを置くかは人それぞれですが、私が一番大切に考えて常に手をかけているのは、ぶどう畑。たとえば、私たちのシャルドネは、花崗岩の土壌に恵まれた美しいタンバランバの高地で作られますが、多くの斜面からなるタンバランバでは、酸味が強く、豊かな風味がぎゅっと詰まった、自然そのままのぶどうを収穫できます。

世界中の素晴らしい白ワインの多くは、水はけの良い土地で生まれていますが、私が求めているのは水はけが良いだけでなく、空気の循環も良い土地です。ドイツはモーゼルのリースリング種や、ハンター・バレーやフランスのボルドーで栽培されるセミヨン種のぶどう畑について考えてみてください。ぶどう畑が二つの深い谷の間に、ちょうど腰かけるように位置しているでしょう。昼間に涼しい空気がよく流れるぶどう畑は、夜になると谷から上がってくる暖かい空気に包まれるので、ぶどうの成長期を通して気候が穏やかで気温が均一に保てるのです。

昼間に気温が高く上がり、夜に冷たい空気で包まれる土地で良いぶどうが育つと、一般的には言われますよね。でも、私の経験では気候が穏やかで気温が均一に保てることが、風味の豊かなおいしいぶどうを育てるのに一番適しているといえます。ぶどうの木にたくさんストレスがかかるのは望ましくありません。風味を生み出すためでなく、単に生き残るためだけに力を使ってしまいますから」

アレックスは、バランスが良く、長く楽しめるワインを造ることを常に目指し、その品質を維持することに情熱をかけています。最高品質のぶどうを栽培するために、何年もの長い月日とエネルギーをぶどう畑につぎ込んできました。そのワインに対するこだわりは、彼のワイナリーにもしっかりと引き継がれ、すべてのワインが細部にまでしっかりと気を配って造り上げられます。

「ワインを造る前からしっかりとしたビジョンを持つということが、私のワイン造りにおける哲学。アイデアが浮かんでいなければ、理想とするワインには辿り着けませんし、良いワインというのは偶然の賜物として生まれるのでもありません。まずはしっかりとしたビジョンを持つこと。それから、良いぶどうを育てるために時間を費やすこと。そして、ワイナリーがきちんと管理し、維持していくことで造り上げられるのです」

アレックスのワインは、数多くの賞を受賞していることで広く知られています。2016年開催の「ナショナル・ワイン・ショー・オブ・オーストラリア」では、シラーズの赤ワイン(Marked Tree Red Shiraz)がトロフィー(Red Wine of Provenance trophy)を獲得しました。同賞は、長年に渡ってそのスタイルと品質に一貫性を示してきたオーストラリアワインに贈られる名誉ある賞です。シドニーやキャンベラの他のワイン・ショーでも、「ニューサウスウェールズ・ワイン・オブ・ザ・イヤー(NSW Wine of the Year)」をはじめとした賞を受賞しています。

さらにアレックスは、2011年の「ヤング・ガン・オブ・ワイン賞(Young Gun of Wine Awards)」や、2010年の「グルメ・トラベラー・ワイン・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー(Gourmet Traveller WINE Winemaker of the Year)」のファイナリストでもあり、ワイン業界ではリーダー的存在。ワイン・ショーのゲスト審査員を務めるなど、オーストラリアのワイン業界で自分の知識や情熱を惜しみなくシェアし、若手ワインメーカーの指導者としても活躍しています。

「私の造るワインが、他とは違うワインとして世界中で認められるようになるにつれて、キャンベラや周辺地区もどんどん力をつけてきているように思います。幅広い年代のコレクターワインの中でも、特に私たちのシラーズには、優雅かつ息の長いワインだけが持つ豊かな表情を感じられます。30年後に味わうのが楽しみですね」

7 Murray Street, Collector, NSW, 2581